停留所でバスを待つ高校生を見ていると、たいていは無言で下を向いたままスマホに夢中だ。自分だけの世界がそこにある▼大人だって似たようなもの。黙々とみんな何をしているんだろう。今はやりのLINEやメール? それともゲーム? コミュニケーションツールの多くがスマホやパソコン頼りになって、生身の人間としての会話が希薄になっているのは確かだ▼便利さと引き換えに何か大切なものを失ってはいないだろうか。「おれが高校生のころは…」と56歳の友人が嘆く。「スマホも携帯もなかったから、怖いオヤジが電話に出ることもある彼女の家に電話するのは大変だったんだ」。だが彼はできうる限りの話術を駆使し、相手の父親の信頼を得る処世術を身につけた▼自分もそうだ。わからないことがあるとすぐキーボードを押す習慣が身についてしまった。昔は書物を開いて探し、詳しい人から教えを乞いたものだが…。不便だった時代が今は懐かしい。