10代のころ、実年齢より上に見られると、「大人びている」と思われているようで、うれしい気分になったものだ。が、年を重ねるにつれ「若く見える」といわれる方が心地よいと感じるようになった▼冷静に考えれば「老いることは当たり前で、そこから生じるのは決して衰えだけではないはず」と分かっているのだが…。平均寿命が伸び、国民の4分の1が65歳以上という時代にあり、やはり「若々しさが一番」という風潮が広く浸透しているせいだと思う▼近年よく耳にする「女子」なる語もその一例だろう。年かさを重ねた女性にさえ、頭に大人をつけ「大人女子」と呼ぶこともある。1970年代の大衆小説あたりでは、未婚女性を「30代の老嬢」などと表現していたとか。あまりの落差に失笑しそうだ▼とはいえ、人間の魅力は「若々しさ」のみではない。年相応の落ち着きと風ぼうが信頼に通じることもまた多く、結局は、生き方の問題なのだとわが身を顧みている。
片隅抄