一見すると何ともいえない郷愁が伝わってくる旧田人二小南大平分校。童話の世界、映画のワンシーンに登場するような牧歌的な校舎がいまだ現存する▼この建物を活用しようと、本市産スギ材を使い、高品質の割り箸製造を手掛ける「磐城高箸」が来年春までに工場を移転するという。緑多く自然環境に恵まれた田人町での業務開始に期待が持てる▼南地区を取材していた頃、たびたび工場を訪れては、取材を兼ね検品ではねられた割り箸をいただいた。素材が確かなため、破棄されるのがもったいなく、ついお願いしてみた。商品にならないとはいえ、使用には問題なかった▼東日本大震災では機械破損に見舞われ、その後の東電福島第一原発事故による風評被害を受け、一時は廃業も考えたという。だが難局に負けず、斬新なデザイン、ネーミングを考案するなど従来の割り箸を工芸品の域まで高めた。もともとは法曹分野を目指していた社長。今後の展開が楽しみだ。