秋の朝は静かである。考えると夏のようにセミが鳴かないからかと、なんとなく合点がいった。キンモクセイの甘い香りも漂う清々しい季節になった▼昨年の10月13日朝7時の風景を動画で保存している。平の新川にかかる旧尼子橋から周囲を撮影したのだが、人の姿はなくただ静まり返り、あふれんばかりの水量がゆっくりと流れている。前夜から、いわき地方などに甚大な被害をおよぼした東日本台風から、もうすぐ1年が経つ▼発生当初は「台風19号」と呼んだが浸水被害などで尊い人命が奪われ、さらに平浄水場が水没、最大4万5400戸が断水するなど、ライフラインも寸断された。東日本大震災を経験した市民にとっても、やや忘れかけていた事態であった▼市内各地では復旧まで時間がかかり、予定されていた行事、イベントは軒並み中止、延期され、連日紙面でその情報を伝えた。新型コロナの終息を見ないまま、2年続けての休止があればさびしい。
片隅抄