コロナ禍で、重症化しやすい高齢者をリスクから守るため、病院や老人介護施設などでは、たとえ家族であっても直接、面会やお見舞いをすることができない▼そのため、パソコンなどを介してのオンラインやパーテーション越しに間接的に顔を見ながら話をするのが精いっぱい――というのを、これまで第三者的な目でテレビの映像や新聞などの紙面を見ていたが、いざその当事者となると冷静ではいられない▼90歳の老父が高齢からくる体の不調で救急車で搬送されたのが2カ月ほど前。半月ほど入院したあと転院し、その後、自宅に戻ることなく病院から老人介護施設に入った。リハビリである程度、体の機能が回復すれば自宅に帰れることになっているが▼この間、老父の皮膚の温かさを実感できる距離で直接会ったのは病院から移ったときの付き添いで2度だけ。人生の千秋楽を迎えようとしているのに…と思うのだが、自宅介護できない身が歯がゆくて仕方ない。
片隅抄