南日本新聞社発のネットニュースで、鹿児島県・さつま町の紫尾温泉の風物詩という「あおし柿」が紹介されていた▼大衆浴場横にある専用湯船に渋柿を漬けると、たった一晩で渋が抜ける。隣の売店で販売する名物で、心身を温めた男性が柿を購入してひと言。「いい湯に漬かるからこそ柿もおいしくなる」とのオチには目尻が下がった▼我が家には、父が生前植えた渋柿の大木が4本ある。以前は眺める程度だったが、管理する立場になると、その実りの多さに閉口するばかり。焼酎で渋抜きをしても食べきれる量ではなく、ご近所におすそ分け。それでも消費しきれず、今季は干し柿に挑戦したら案外おいしくできた▼マチ育ちだが、幼いころは軒先に干し柿をつるした民家をよく見かけたものだ。まさか自らやるとは思いもよらなかったが、干し柿のある情景を見ては悦に入る。何より子どもたちに伝統食がどのようにできるのかを見せられたことが、とても嬉しい。