初めて小名浜の花火大会を見たのは40年以上も前のことだ。記憶の片隅に残るのは、父の車で藤原ふ頭に向かい岸壁から眺めた大輪。遠目だが家族で見た鮮やかな花火は一生忘れられない▼桟敷席で体感したのは、随分と後のこと。平成18年の夏だ。それも仕事でファインダー越しの花火。酒片手にほろ酔い気分で楽しむ観客を横目に、「まともな写真が撮れなかったらどうしよう」との恐怖と戦いながら、2時間必死にカメラと向き合った。コロナ禍を挟み17年もそんな夏を過ごした▼今夏はFMいわきの生中継を流し自宅のベランダで眺めたが、もの足りないばかりか〝現場〟が気になって仕方がない。プライベートを投げ、半年前から準備を進めてきた実行委員会の懸命な仕事ぶりも思い浮かぶ▼やはり、花火は間近で体感するのが一番だ。ちなみに家族一緒に眺めた藤原ふ頭での花火。実は満足感よりも、幼少には静寂の中で響く波音と真っ暗闇の恐怖が勝っていた。
片隅抄