東京電力福島第一原発の汚染水を浄化した後の処理水を巡り、岸田首相は22日、首相官邸で関係閣僚会議を開き、海洋放出を始める時期について「気象・海象条件に支障がなければ、24日を見込む」と表明した。政府と東電は2015(平成27)年、県漁業協同組合連合会(県漁連)と処理水に関して、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との約束を交わしており、県漁連をはじめとする地元漁業者は反対の姿勢を貫いているが、30~40年にわたる廃炉の着実な進ちょくに向けて、原発処理水の海洋放出は不可欠と判断した。
関係閣僚会議では、岸田首相は「風評影響や、なりわい継続に対する不安に対処すべく、たとえ今後数十年の長期にわたろうとも、処理水の処分が完了するまで、政府として責任を持って取り組んでいく」とも語った。
海洋放出は、処理水に残る放射性物質トリチウムの濃度が、国の基準の40分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の7分の1にするため、福島第一原発の港湾外から取り込んだ海水で希釈した上で、海底トンネルを経由して、沖合1kmから流していく。トリチウムは三重水素とも呼ばれ、普通の水と性質が似ており、現在の技術では除去は難しい。そのため海外でも基準値以下に薄めて、恒常的に海洋放出を行っている。
7月には国際原子力機関(IAEA)が、海洋放出は「国際的な安全基準に合致していると結論付けた」とする包括報告書を公表した。報告書では「東電が現在計画している通りの管理された段階的な放出であれば、人や環境への放射線による影響は無視できる」とも指摘している。
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