著 者:金田一秀穂
出版社:暮しの手帖
価 格:1650円(税込み)
言語学者がユーモア交えて日本語の面白さを解説
新しくて不思議な日本語は、日々生み出されている。例えば「うれしみ」や「パリピ」「肉肉しい」などなど。それらは、もともと存在した言葉を縮めたり、繋げたり、はたまた本来とは違う意味を与えられたりした言葉たちである。SNSが常に身近にある現代において、そのスピードはより一層加速しているように感じられるが、だからといって「ついていけない」と一蹴してしまってはもったいない。
本書では、それらの日本語がどのように構成され、使われるようになったのかをユーモアを交えつつ、わかりやすく説明してくれる。肩の力がほどよく抜けた文章からは学者然とした厳しさは欠片も感じられず、むしろ飄々とした語り口が心地よい。
「歯磨き粉」にいまだ「粉」の字が使われていることを気にしてみたり、「高級食パン」の「高級」に噛みついてみたり。普段私たちが意識せずに使っている言葉も、言語学者ならではの視点で考察していく。そこには、これまで真剣に正直に日本語に向き合ってきた著者の姿も垣間見えた。
どんどん変化していく若者言葉に目くじらを立てるのではなく、かといっておもねることもせず、ただあるがまま、こんな風に面白がれる柔軟さが欲しいものだとつくづく考えさせられたエッセイである。
(鹿島ブックセンター勤務)
※紹介する人:八巻明日香さん