平字三町目の「じゃんがら・からくり時計」が岐路に立っている。この時計はいわき地方の伝統芸能・じゃんがら念仏踊りをモチーフに、市制施行25周年を記念して造られ、1992(平成4)年4月から、いわき駅前大通りで時を刻んでいる。2時間に1回、8体の人形が登場し、鉦(かね)と太鼓の音色で道行く人を楽しませていたが、老朽化で故障が度重なり、市は修理費の問題から今後の対応を模索している。
いわき駅前大通りのシンボルとして、首長竜や三葉虫、クジラなど、いわき市で発見される化石の生き物が描かれている時計の両脇が2時間ごとに開き、アレンジされたじゃんがら念仏踊りに合わせ、人形が約3分にわたりパフォーマンスを繰り広げた。人形は提灯持ちから現れ、まるで本物さながらにじゃんがら念仏踊りを先導する。
からくり時計は、1984(昭和59)年に東京・有楽町に設置された「セイコー・マリオンクロック」に着想を得ている。時計メーカーのセイコーで手がけており、全国的に話題となったことから、いわき市でも製造を依頼したとされる。
ただ年月を経る中で不具合は避けられず、人形がすべて出てこないことも。たびたび直してきたが、どうしてもその場しのぎのため、いまから約10年前にセイコーに相談。すると部品が一点もののため、分解による点検には数千万円かかることが判明し、むしろ新造した方が安価だと分かった。
他のメーカーや、この手の整備に詳しい人たちに当たるも、特注品とあって解決には至らず。結局予算の範囲で手を加えていたが、年明けに動くようになってから2カ月あまりで、また止まってしまった。いわき市と同じ時期にお目見えした全国各地のからくり時計は、やはり同種の悩みを抱え、撤去されている事例も少なくない。
市の担当者は「本格的に直そうとすれば10年前に数千万円だったので、資材費や物価の高騰で、いまでは1億円を超えてしまうのでは……」と打ち明ける。市ではそのあり方について、地元関係者の意見を聞いている。
一つのアイデアとしては、人形を常時見えるようにし、街なかの時計としての機能を残す方法が考えられるが、時刻は携帯電話・スマートフォンでも確認できるため、需要は見込めないという。仮に時計を撤去する場合にも人形は残し、多くの人の目に付く場所に展示してほしい。
(写真:人形が登場するからくり時計=いわき市提供)
ニュース