四倉町塩木地区の仁井田川沿いに、いわきでは見慣れない葉が青々と茂る畑が広がっている。大人の背丈を超えるほどに成長した幹に、たわわに実っているのは青パパイア。60アールほどの畑で、「麦わらファーム」の佐久間英行さん(56)が手塩にかけて栽培している。
自身が生まれ育った川前町の桶売地区でも青パパイアづくりに取り組んでいるが、気候がより生育に向いている四倉町での栽培に力を入れている。
佐久間さんは専門学校を卒業後、市内や田村郡小野町の企業で約35年にわたりサラリーマン生活を送った。金型や治具制作の仕事をしていたが、一念発起して脱サラし、昨年の年明けごろから青パパイアづくりに本腰を入れた。
パパイアは完熟すればフルーツとして、未成熟の場合は青パパイアと呼ばれ野菜として料理などに使われている。青パパイアは食物繊維やビタミンC、ポリフェノールなどのほか、パパイン酵素と呼ばれるタンパク質分解酵素を豊富に含んでいることから、健康と美容に良いとされる。佐久間さんによると、いわきの気候では露地栽培でパパイアが完熟することは難しい。
佐久間さんは農業未経験ながら青パパイア栽培の道を選んだが、実は農業以外にもいくつか選択肢はあったという。しかし両親が70代で他界していることも踏まえ、「日本スーパーフード協会で青パパイアが紹介されていたので、どうせなら体にいい物を作りたい。南国原産で生産者が少ない作物に挑戦しよう」と決意を固めた。
自宅のある川前町と四倉町に畑を借り、肥料と米ぬかを入れて土壌改良をしたあと、茨城県の農園から苗を購入して手作業で植え付けた。四倉の畑では、思っていた以上に風が強かった影響で苗が倒れてしまい、植え直した苦い経験も。
繁忙期に手伝ってくれる友人や仲間もいるが、普段はひとりで青パパイア畑を管理する一方、隣接する畑ではブロッコリーやとうもろこし、キャベツなども栽培している。
「青パパイアの畑は栽培をしながら土も育てている段階です。気候が違うので川前よりも四倉の畑のほうが、収穫量が多いですね」と佐久間さん。初年に収穫した分は、宮城県仙台市の加工業者がまとめて購入してくれたが、2年目の今年は〝地元に貢献したい〟との思いもあり、いわき市内での販路拡大に努めている。
(写真:青パパイアを栽培する佐久間さん=四倉町の畑)
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