作者自身の広島での被爆体験をもとに、世界中で翻訳され、読み継がれている「はだしのゲン」。初見は漫画や実写ではなく劇場版アニメで、小学生のころだったと記憶している。テレビで見たから特別放送か▼夏休み中で、6日の平和記念日、または終戦日に合わせた放映と推測する。同世代のゲンの姿に自身を重ね、すぐ物語に没入した。原爆投下後、熱線で皮膚が焼けただれた『幽霊のよう』な被爆者が町を彷徨い、川に身を投げる姿に震え上がった。夢か現実か分からない惨い描写に目を逸らすこともできなかった▼露のウクライナ侵攻で「ブチャの虐殺」を目にし、当時の記憶がよみがえった。罪もない市民に手をかける蛮行に強い憤りを感じるとともに、なぜ先の大戦で2度も原爆を落とし、爆撃や機銃掃射で市民を標的としたのか、歴史書をいくら紐解いても納得いく答えは出てこない▼わずか80年前の出来事。経験者の声に耳を傾け、思いはより強くなった。