人や家畜が襲われたり、農作物が食害に遭う。その駆除として市街地でも発砲できる緊急措置がとられる――熊が日常的に人里に現れる非常事態が続いている▼市内の北部、西部は阿武隈の山続きにある。いつ熊が現れてもおかしくない。少し前までイノシシの駆除に手を焼いていたのが嘘のようだ。冬を前にして、冬眠に入れない熊の襲来が気になる▼鹿島町に「走熊」という地名がある。地名は地形や歴史、人名、伝説などが由来であるケースが多い。また訛って別の字が充てられることもある。ここでかつて熊が走り回っていたかはともかく、熊が駒(馬)であったり隈(奥まったところ、山や川が曲がり込んだところ)だったかもしれない▼古来、奥州や阿武隈山系で勢力を広げ朝廷と敵対した豪族は〝鬼〟になぞらえられ、同じ朝敵でも九州では『熊襲』と呼ばれた。昔も熊は怖れられる存在だったのだろう。『征伐』ではない、熊との〝共存〟の手だてはないものか。