明治から昭和にかけた筑豊炭田の生活を描いた、故山本作兵衛さんの画文集『炭鉱に生きる』が44年ぶりに、新装版として発行された。背景には5月に、これら山本さんの作品が世界記憶遺産に登録されたことがある▼7歳から炭鉱で働いた山本さんが「ヤマの姿を残そう」と絵筆を執ったのは60歳以降で、数百枚の絵と6冊のノートに記録した。画文集には、坑内での作業や炭住での生活の様子が、添え書きのある分かりやすい絵と日記でまとめられている▼見て真っ先に思い浮かんだのが、市石炭・化石館「ほるる」の模擬坑道だった。山本さんの絵は、ほるるの展示と大きく違わないものばかりで、逆に言えばいわき市民として、ほるるの重要性を再認識した次第である▼当地においては閉山後35年がたち、炭鉱が基幹産業として地元の暮らしと経済を支えてことを知らずに育った世代も多い。そうした今、その歴史をたどれる施設が身近にあることもまた財産だと感じた。
片隅抄