生まれ変わったいわき駅南口駅前広場を眺めながら、ふと旧駅ビル「ヤン・ヤン」の向かって右上壁面を飾っていた『平駅』の2文字は今、どうなっているんだろうと思った▼毛筆で書いたような、なかなか味わいのある駅名板だった。新入社員だった30年前、その平駅前一帯は喫茶店の密集地で、個性豊かな店が軒を連ねていた。他の駅前にはない街並みを、抄子は心の内で自慢していた▼再開発された駅前は清新な雰囲気を醸し出しているが、ひねた見方をすれば、どこの街にも見られるイマドキの駅前風景になってしまったように思う。駅前で古くから商いを営んでいるある古老は「昔からの平らしさがなくなったよ」と嘆いていた▼新しい街に生まれ変わったいわき駅前。市の陸の玄関にふさわしい〝らしさ〟を今後どう構築していくのだろうか。ほかにはない個性ある街の雰囲気づくりは一朝一夕に実現できない。その意味ではこれからが本当の再開発といえよう。
片隅抄