遠足のシーズンだ。昨日もリュックを背負ったかわいらしい一団を見かけた▼「遠足の子供らが来るとね、缶に入れた石炭を燃やしてみせるんだ。驚く顔が何とも言えないよ」と話すのは内郷白水町の自宅で私設の『みろく沢炭砿資料館』を開いている渡辺為雄さんだ。今から155年前、石炭業の礎を築いた片寄平蔵が苦労して〝燃える石〟の露頭を発見した弥勒沢はすぐ近くにある▼かつて中小の炭鉱があった土地柄だけに、資料館そばの山肌では石炭の露頭が見える。自分の手で採掘させてもらえるので、ここに来れば誰でも片寄平蔵になれるのである。平蔵は、NHK大河ドラマに登場している坂本龍馬や勝海舟と同時代を生きた人だ。してみれば、この石炭が咸臨丸の燃料になったのではないかというロマンも広がる▼電気やガスぐらいしか身近な燃料を知らない子供たちが小さな手で石炭を掘り、それを燃やしてみる。生きた教材はかえがたい感動を生むだろう。