デジタルカメラになってからというもの、撮ったらすぐモニターで確認できるようになり、自宅でプリントも可能。パソコンがあればデータを保存できるからアルバムもいらない▼フィルムの時代はこうはいかなかった。1本36枚撮りだから1コマのシャッターを切るのに慎重になったし、再生モニターがない分、構図や明暗、ピントは頭の中で想像した。写真屋さんから出来上がりを受け取るときはドキドキしたものだ▼テレビは今やデジタル化され、これからは3Dの立体化が当たり前になろうとしている。映画はCGによってどんなシーンでも再現できるようになった▼だが、こうした便利さを手にすることで鈍化していくのが人間の感性というものではないか。目に見える上っ面の美しさや迫力に心を奪われて、〝ナマ〟という本質の部分を見失ってしまうことに気づかない。小さな子供に本来備わっている〝審美眼〟をいたずらに壊さないように注意したいものだ。
片隅抄