1969年7月16日、アメリカのケネディ宇宙センターから打ち上げられた有人ロケット「アポロ11号」。4日後には無事、搭乗員2人が月面に降り立ち、人類初の偉業を成し遂げた▼日本は当時、昭和44年。家庭に普及始めたカレーテレビによって、その模様を見た。夏時分であり、窓が開け放たれた近所の家々からもニュースが聞こえてきたのを覚えている。翌年の大阪万博では、持ち帰った「月の石」が展示されたりもした▼あれから40年以上がすぎ、地球と月の距離は縮まったがささやかなロマンも残してもいい。あいにくの雨にたたられた十五夜に続き、26日には恒例のいわき遠野歳時記「満月祭」が入遠野小をメーン会場に開かれる▼2度取材に訪れたが、校庭に並ぶ和紙の小行灯がほのかな光を放ち、幻想的な世界が楽しめた。さらに裏手の縁日広場に続く道は、わずかな灯りのみ。月光を頼りに歩けば、漆黒の闇を畏怖したころが思い出される催しだ。
片隅抄