3月に出た宮本輝の小説『三十光年の星たち』。「人生を見る尺度は30年」を主題に、その間の誘惑や労苦に立ち向かい生き抜こうと決意した若者が描かれている。この時期に感慨深く読み終えた▼30年という歳月について、今回の震災のすべてが総括されるまでに、そのくらいかかるのではないかと思っている。津波で壊滅した地域が再生・成長していくまで、原発事故により実際にどれほどの被害・影響があったのかが明確になるまで――歴史として検証できるまでには20~30年は必要だろう▼そしてそれを見届けるべきは、今の子供世代である。今春の入学・始業式はどの児童・生徒にとっても忘れえぬ思い出となるだろう。そしてそれは新たな出発点でもある▼20~30年後、この震災を乗り越えた日本はどんな姿になっているのか。その担い手は今の子供たちである。それを心に留め、30年後を見据えながら学校生活を送ってほしい。満開の桜の下で強くそう願う。