震災後、「言葉」を求めている人が多いことを感じる。「言葉」は「救い」と言い換えてもいいかもしれない。テレビを見ていれば、日に何度も著名人のメッセージが流れ、書店にはその類の本が目立つ位置に並んでいる▼今、すべての人の心を占めている1番の要素は「不安」だろう。もちろん原因はあの地震だが、それを機に多くの人が、余震・原発・仕事・収入・住居など、己でどうにもならないものへの不安にさいなまれている。そして、そこから抜け出したがってもいる▼そんな人へ、さしたる救いにもならぬだろうが、週末に出合った言葉を。こんなふうに、少し距離をおいてみないと今の状況を生き抜けないのでは――そんな思いも込めて、作家伊集院静の近著から「どんな生き方をしても人間には必ず苦節が一、二度むこうからやってくる」▼そしてあらためて思う。人を救う「言葉」を紡ぐのもまた人なのだと。だから人は人に生かされている存在なのだと。