今回の震災における市内の死亡者は7月31日現在で308人。さらにいまだ40人の行方が分かっていない▼一方、国は遺体が発見されていない場合でも、不明から3カ月で死亡届が提出できる措置をとった。遺族の生活再建のため、遺産相続や死亡保険金の受け取りを早めることができるようにとの意図だが、遺体を見ずして、大切な家族の死を認めたい人などいないはず▼しかしながら遺族は同時に被災者でもあり、何をするにしても資金が必要で、苦渋の決断を強いられた立場の心境はいかばかりか。そんな方々へ、ほんの気休めにしかならぬことを承知で申し上げたい▼8月、亡き人が帰ってくる月遅れの盆の季節を迎えた。肉親の死を受け入れる悲しみはあろうが、その魂がためらわずに帰ってこられるように、安らかな眠りに入ったことを認めてあげるのも、家族の務めではないだろうか。海に召された亡き人もまた「お帰りなさい」の言葉を待っていると信じて。
片隅抄