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片隅抄

2011.08.22

 漫画家で江戸風俗研究家でもあった故杉浦日向子さんは、江戸庶民の生活についてこう述べている。「衣食住はいつも八分目で、足りない二分は工夫する。他の物で代用するか誰かから借りるか、自分の才覚でその場をしのいだ」▼震災後、この言葉を得心している。地震に原発事故が重なり物流が止まり、物が無い・買えない時期には、「便利が当たり前」の状況にこれほどまでに慣れ切っていたのか、と反省もした▼その中で逆に、それまで必要だと思い込んでいたうちの幾つかは無くても生きていけることを知った。「便利」と信じ込んでいたものの幾つかは「無駄」かもしれないと感じるようになった。例えば「石けんさえあればシャンプーはなくても何とかなる」「体をふくのは大きなバスタオルでなくてもいい」▼そして、さまざまな物の使い捨てを控えるようになった。失うものばかりが多かった震災だが、従来の暮らしを見直す大きな機会になったことも確かだ。

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