偶然に絵本『3匹の子豚』を手にした。狼が豚の兄弟が建てた藁、木、レンガの家を次々に襲う話だが、幼いころ読んだ記憶では、狼は最後に末弟のレンガの家で、煙突からカマドの中に落ちて豚に食べられてしまったはず▼が、近年発行のその本では「やけどし山に逃げ帰った」とある。これに限らず、残酷な話を穏やかに書き換えている例はあるらしい。教育上の配慮だろうが、自分がこの内容を覚えていたのも、狼が食べられたからで、逃げ帰っただけならとうに忘れていたろう。子供心に「悪事は許されない」と悟った出合いだった▼少しそれるが、子供たちに、魚を捕り、調理し、食うまでを含む命の教育を展開するアクアマリンふくしまの安部義孝館長は、著書で「動物園や水族館は、温もりやかわいいという情操教育の域を抜け出すべき」と説く▼そして同館は「命の教育活動により、人間社会の安全装置としての責務を果たしていく」とも。絵本も同じだと思う。
片隅抄