声高に詰め寄る男性と従来の回答を繰り返す市側。いわき市内9つの海水浴場のうち今夏唯一、開設される勿来海水浴場の「海の家」設置をめぐる問題は、解決の糸口が見つからない状況だ▼行政、民宿、海の家経営者などが出席した「勿来・小浜海水浴場安全対策会議」。本来なら海水浴場の開設期間中、遊泳客の安全確保と快適な環境に万全を期す関係者の話し合いの場なのだが、2回にわたる会議でも接点は見いだせなかった▼紛糾した初回から6日間あったが、調整が図られないまま再会議が開かれ、双方の主張が対立したまま時間だけが経過していった。市側のいう「安全面を最優先に、にぎわいの創出を目指す」は理解できる▼震災前、平均18万人が訪れた勿来海水浴場。しかし払しょくしきれない風評の中、どれほどの誘客を見込んでいるのだろうか。ある民宿ではいまだ「予約ゼロ」と聞く。現状を理解した上で開設に踏み切ったのか疑問が残る。
片隅抄