福島第一原発事故の影響で双葉郡からいわき市へ避難しているある町の、町長はじめ町役場の各課担当者と避難住民との懇談会を傍聴したことがある▼気になったのは、町政を預かる人たちの発言を「そうは言うけど信じられないなぁ」と住民が信用していないこと。「町長といわき市長の仲がうまくいってないって聞いたけどどうなの?」。そんな質問も出た▼住民が国や東電の言動に不信感を抱くのはわかるが、最も身近な町長や職員との間にも緊張した空気が漂っていたのである。それは遅々として進まない賠償問題や復興・復旧策などはっきりした将来像が見えていないことへの不安、焦燥感があるからかもしれない▼懇談会では「小学校3年の子どもが学校で、同級生に『あんたの家、税金払ってるの?』と言われた」という声もあった。もし本当なら、いわき市民として悲しいことだ。互いに理解しあわなければこれからもつまらぬ誤解を生んでしまう。戒めたい。
片隅抄