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片隅抄

2013.03.01

市遠野支所に近接する金澤翔子美術館。「共に生きる」「希望光」など、金澤さんの堂々とした書が常設されている。その一角で今月末まで書家曽山尚幸さんの個展が開かれている▼タイトルは「元がん患者の個展 縁筆」。18歳で悪性リンパ腫、いわゆる白血病にかかり2年間の闘病を経て現在にいたるわけだが、本人は屈託のない青年だ。話を聞いてみると「膝が痛くて曲がらなくなったんです。精密検査したらステージ4でした」▼孤独な入院生活を送る中、無聊を慰めるために筆ペンで書を始めたという。就職してわずか2カ月後に宣告された血液のがん。難病に立ち向かうため、つらい骨髄移植も受けた。「体の血を入れ替えたら、血液型が変わってしまった」と笑う▼館内には「父母」「感謝」「絆」などの柔らかな書体でしたためられた作品が並ぶ。彼と話すうち、18歳で発病した時の思いをつい想像してみたが、あまりに愚問すぎて聞けなかった。

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