昔話の「ぶんぶく茶釜」は、わなにかかった狸を助けた人間へ対する、狸の恩返しの物語だ。この話を通し、人と動物のかかわりを自問する▼よくペットに関する取材をする。その際必ずと言っていいほど飼い主が口にするのが「うちの犬(猫)は絶対、人間の気持ちを理解している」だ▼確かにペットの反応の仕方などを聞けば、うなずかざるを得ないのだが、当のペット側が本当に飼い主の気持ちに沿ってそう行動しているかは、知る術もない。ただ『犬から聞いた素敵な話』『犬が教えてくれたこと』といった書籍が、書店の目立つ位置に並んでいたり全国紙で紹介されていたりするのをみると、それもありなんと感じている▼思えば「ぶんぶく茶釜」に限らず、ハッピーエンドではないものの「鶴の恩返し」「浦島太郎」など、動物の恩返しの話は古くからある。人は「1人では生きていけない」だけでなく「人だけで生きているのではない」のだと考え至った。