20年前の夏、伊豆七島のうち2島を訪れたことがある。行きはプロペラ機で八丈島、戻りはフェリーで三宅島に向かい、合わせて4泊のキャンプを行った▼宿泊施設を使わない気楽な旅だった。八丈島の居酒屋では戦前、南洋諸島に存在した店の名前を出しながら、交易が盛んだった当時を懐かしむ地元の古老。三宅島の港でも、外国から移住した著名な海洋学者の姿を目にするなど、印象ある数日間だった▼その七島の1つ、伊豆大島が先の台風26号で甚大な被害を受けた。10年に1度の大きな台風と警告していたにもかかわらず多数の死者、行方不明者を出してしまった。東京都下の大島町でありながら、情報の不伝達には首をかしげたくなる▼住民の混乱を考え避難勧告、指示を出さなかったという。台風が迫るころ、出張で不在だった同町長と副町長。記者会見を見たが「事態をよく検証したい」との弁。最悪時を想定しなかった甘さが大きな禍根を残した。