師走前半、ノーベル物理学賞授賞式に出席した日本人3人の明るい話題が、マスメディアを彩った。が、後半は、同じ理化学分野におけるSTAP細胞問題のてん末に、後味の悪さを禁じ得ない▼大学時代に歴史学を学び、担当教官には、一次史料の研究の重要性をみっちり仕込まれた。併せてよく言われたのが「常に歴史学徒であれ」。学者ではなく学徒という語から、学問に対して常に謙虚であれという教えだったと理解している▼「学問は決して高尚ではない。だがひたむきに取り組むべきもの」だと思っている。STAP細胞問題の報道を見聞して思うのは、プレッシャーや期待に対する研究者のあせりや功名心が、誤った道への端緒となったのではないか、ということだ▼事実上、存在が否定されたSTAP細胞。この問題が、日本の研究界にどんな影響を及ぼすのか。その上であえてかみ締めたい言葉は、ノーベル賞受賞者中村修二氏の「リスクを取れ」だろう。
片隅抄