最近、死亡記事の年齢を気に掛けることが多い。100歳を超えて大往生される人や若くして亡くなられる方もいるが、80歳から85歳前後が多いように思う▼先日、母親から「母ちゃんのお見合い写真を撮ってくれ」と言われた。母は85歳になる。自分の葬儀のときに掲げる遺影用の写真を探してみたが、気に入ったのが見当たらないので息子に撮影してもらおうというのだった▼若いころから毎日1人で野山に出て農作業に明け暮れ、趣味をもたず、人付き合いも苦手な母は写真を撮られることがほとんどない。「お見合い写真」などと普段めったに言わない冗談を言ったのは照れ隠しだったか。彼女なりの〝終活〟だったように思う▼「おっ、この写真いいね!」と十数枚の中から1枚を選んで大事そうにしまった。56歳になった今も両親とも健在でいてくれるのはうれしい。この遺影写真が使われる前に少しでも恩返しの親孝行をしたいと愚息は思うのだが、さて――。