原発の廃炉作業はまだ緒についたばかり。仮設住宅には多くの人たちが避難生活を続け、震災で肉親を失った遺族の悲しみは消えることはない▼だから「震災を忘れてはならない。忘れてほしくない」のだが、その一方で「いつまでも震災を引きずっていては前に進めない」という考え方もできる▼熱戦が続く夏の高校野球福島大会での1コマだ。試合終了後のインタビューで、取材記者が「思い出させて悪いけど、震災ではおじいさんが亡くなったんだってね」「避難生活はどうだったの?」と、いまだに震災とプレーと結びつけて質問をしていた▼震災の影響色濃い初出場・ふたば未来学園の話題ならともかく、4年4カ月前の被災体験をほじくり返される選手はどう思っているのかと気が気でならない。それより、たった今グラウンドで見せたプレーを正しく評価してほしいはずなのだ。「その質問、今の試合に関係あるんすか?」と言ってくれないかなと思っている。
片隅抄