きのう第153回の芥川賞・直木賞の受賞者が決まった。作品はまだ読んでいないが、前評判の高かった芸人さんが見事芥川賞を取った。今後、作家と芸の二足わらじで活動するのだろうか▼かつて6回目にして直木賞を受けた池波正太郎さん。『鬼平犯科帳』『仕掛け人藤枝梅安』『剣客商売』などの代表作のみならず多くの時代物小説を残しているが、最近、鬼平以前に執筆した現代もののいくつかを読んでみた▼「お郷里はどちらです?」「福島県勿来市植田町。その町の小ちゃい製材所の次女です」一気に答えたのが可笑しく、二人は声をたてて笑い合った―。昭和32年に発表した『眼(め)』の一節▼盲目になった主人公の青年と彼をサポートする女子大生の会話を記した物語終盤のシーン。同作品は直木賞候補作にもなり、著者も実在の人たちから取材し、懸命に書いたとある。それにしても植田町の女性が登場するとは意外な気もしたし、親近感もわいた。