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片隅抄

2016.03.28

3月も最終週、大の月ながら、このひと月を短く感じているのは自分だけではないだろう。とかく年度末は慌ただしい▼そして、週末には新年度がスタートする。全国的には、桜の開花の報に触れることも多いが、当地においてはいまだ余寒が厳しく、春の訪れを実感しにくい日々が続いている▼そんな中、防潮堤建設が進む海岸沿いを歩きながら、砂浜に降りてみた。高くなった〝壁〟の外側に出るやいなや、磯の香りが鼻腔をくすぐってきた。4月を前に「やはり春は来ていた」と、心が浮き立った。が、同時に、寂しさを感じたことも否めない▼というのは、これまで堤防沿いを歩いているだけで感じられた磯香が、防潮堤のかさ上げにより、さえぎられていたことを実感したからだ。さらに言えば、海とともに生きてきた人間にとって、海が感じられないことは、単に寂しいだけはなく不安でもある。命を守るための防潮堤の役割を認めつつつも、思いは複雑である。

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