助かってほしいと願う人は多くいても、絶対生きていると思っていた人はどれだけいただろう▼しつけと称して車から降ろされ、自衛隊の演習場があるほど人里離れた北海道の山中で6日間も水だけで1人生き延びた、小学2年生男児の精神力と体力には驚かされた▼実は男児のお父さんを非難できない。娘が男児と同じ年頃のころ、郡山から猪苗代湖に行く途中の山中で、ちょっとしたイタズラのつもりで外で雪遊びをしていた娘を置いて少しだけ車を走らせたことがある。慌てて雪道を夢中で追ってきた娘を見て、やってはいけないイタズラだったと謝った▼だが、22歳になった今でも娘は買い物で車を降りるたび(無意識に)「置いてかないでね」と言う。トラウマの一種なのだと思う。男児の今後の精神的なストレスや親子関係を心配するが、たくましい男児には心配無用だろうか。男児や痛恨の極みにいる家庭に土足で押し込むような後追い取材がないように願う。
片隅抄