漫画家こうの史代の『日の鳥』は、いなくなった妻を捜す雄鶏が、東日本大震災の被災地を旅する物語だ。2年前に第1巻、今月第2巻が出た▼「ニュースで取り上げられている場所ばかりでなく、普通の風景も描きたかった」という著者。いわきも訪れ、2冊の『日の鳥』には、私たちの身近な風景がボールペン画で収められている▼第1巻には、隣り合わせのページで震災1年9カ月後の久之浜とラトブが登場。久之浜では家の基礎だけが残った町並み、そしてラトブでは館内のクリスマスツリーを描いている。第2巻には永崎海岸やスパリゾートハワイアンズ、そして両巻ともに出ているのが市石炭・化石館だった▼絵からだけで「震災」を感じ取ることが難しいページもある。そんな時、震災の跡や復興の歩みを伝えてきたのは、雄鶏(著者)が現地で見聞きして感じたこと。絵に添えられたそれらを読み、こんな伝え方もあるのかと、優しい心持ちになる作品だった。