たまたま同席したカラオケルームで、小学1年生くらいの男の子が美空ひばりの「みだれ髪」を情感たっぷりに歌ったのには驚いた。そばにいたおばあちゃんから教わったのだろう▼昭和40年代から50年代の歌謡曲全盛の頃を知っている1人だ。歌番組は減ったが、たまに録画で〝昭和歌謡〟を聴くと歌詞、メロディー、イントロを含めた編曲がじっくり作り込まれているのをあらためて実感する▼手焼きの銀板写真の方がデジタル写真より趣があっていいと思うのに似たひいき目もあるが、たとえば八代亜紀の「舟歌」や石川さゆりの「津軽海峡冬景色」などは歌自体が一つのストーリーになっていて、目をつむれば情景が浮かんでくる▼16日に亡くなった船村徹さんの作品でいえば北島三郎さんの「風雪ながれ旅」だろう。昭和歌謡を聴くとそのときの時代背景がよみがえってくる。〝ノリ〟で歌う今の歌にはない良さだ。小学生に歌い継がれているのを聴いてホッとした。