バーカウンターで男女が会話する。「昨日はどこに」「そんな昔のこと…」「今夜は」「そんな先のこと…」。映画カサブランカのワンシーンだ▼詰問調の女性を見もせず、うつむきながら愛想なく答える今は亡きハンフリー・ボガート。名作に散りばめられた一つ一つのシチュエーションは、公開から70年以上たった現在でも色あせない。この格好よさ、映画の中だけといってしまえばそれまでだが▼財務省次官のセクハラ問題が日増しに大きくなっている。テレビ局女性記者が深夜、飲食店に呼び出され何とも下品な言葉をかけられたという。業務上「取材」の延長と理解するが、肝心の答えを引き出す前に、この展開ではとあきれ返る▼音声データが存在するも次官は逃げの一手。発言を認めることなく辞意を表明した。「そんな昔のこと」とシラを切りたいだろう。データを第三者に持ち込んだことには疑問も残るが、官僚トップも酔漢の恥をさらしたようだ。