ひところいわき駅前周辺などで消費者金融を宣伝するポケットティッシュが配られていた。通るたびに渡され、結構な量になったことを覚えている。ある時期から男の似顔絵が刷り込まれるようになった▼平成13年5月、青森県弘前市の金融業支店で起きた強盗殺人・放火事件。犯人の男は金銭を要求、拒絶されるや主にガソリンを含む混合油を店内にまき、火をつけ逃走。逃げ遅れた社員5人が焼死するという凶悪な犯行があった▼その際、指名手配された犯人のモンタージュを似顔絵化し、印刷物を封入したものが、先のポケットティッシュだった。懸命な捜査の結果、10カ月後に逮捕され極刑に処せられた▼きのう京都市のアニメ制作会社が男に放火され、33人の命が奪われた。まかれたのはガソリンという。引火性が高く危険極まる燃料を使い、大惨事を引き起こしたのだが、あまりの残虐性に言葉もない。業火に倒れた人たちの無念を思わずにはいられない。
片隅抄