先日、市立美術館にいたとき、企画展を見に来ていた老夫婦が、「この美術館はいいよな、町場にあって近いから」と言っているのを聞いた。続けて、やり玉に挙げたのは市立草野心平記念文学館だ。「何であんな遠い山の中に造ったもんかねぇ」▼今は車社会だから、美術館や博物館、文学館などの施設はむしろ、狭い市街地より少し遠くても広いスペースがとれる郊外の、自然の中にあった方が非日常の時間をゆっくり楽しめると思っていた▼海に近く天然芝や植栽が美しい茨城県天心記念五浦美術館や広大な庭園をもつ郡山市立美術館などがこの例だ。屋外でイベントを開いたり、景観を楽しみつつ散策や食事を楽しんだり、展示を見ること以外の付加価値を見いだすことができる▼かつて市立博物館構想があったときは、中央台が建設候補地に挙げられた。まさに市の中央で敷地も広くとれる。ここなら老夫婦も納得してくれるだろう。夢物語に終わったのが惜しい。