久しぶりに部屋を片付けていたら、本に挟まって手のひらに隠れるような小さなメッセージ入り封筒が出てきた。もう数年前のものだ。「父へ――いつもご飯やお弁当を作ってくれてありがとう。言葉にしないけど感謝しています」▼3歳で母親をなくしたひとり娘の食事と弁当をずっと作り続けている。今風の〝イクメン〟のような使命感はなく、もはや日常のルーティンだ。友人からは「いつまで甘やかしてんだよ!」と叱られるが、さてどうしたもんだろう▼あすは「父の日」。世のお父さんたちはどんな至福の日になるのだろう。もっとも『父の日に自分で丸をつけておく』という川柳があるくらいだから、ただの日曜日になる……かもしれない▼保育所の満了式で、壇上から「お父さんの作ってくれたお弁当、おいしかった」と言われたときは涙が出たが、それが二十●歳になった今まで続くとは笑ってしまう。あすは手料理を振る舞うというが、さて出来栄えは?