「福島のあとに、沈黙していることは野蛮だ」。世界を代表する音楽家・坂本龍一さんが亡くなった。「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」での活躍や、映画「ラストエンペラー」で、日本人として初めてアカデミー賞作曲賞を獲得したことなど、特筆すべき話題は尽きないが、原発事故後の福島に寄り添った姿も忘れられない▼もともと反原発の姿勢を示していた坂本さん。2006年には、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場への反対を訴え、共同プロジェクトを立ち上げた。あの災禍の前から、問題提起をしていた人の言葉は重い▼坂本さんは現実的な提案もしていた。「2050年頃には、原発をやめられるくらい自家発電が当たり前の世界にしていこう」。世の中は少しずつ変わっていけると▼いま岸田首相は原発回帰を強める。1日にも福島に来て、復興を口にしていたが、もう一度12年前を思い返すべき。この地で何が起きたかということを。