いわき勿来ICから車で10分。山あいの宿泊施設として、市内外から親しまれてきた「田人おふくろの宿」が岐路に立っている。現在の運営主体は高齢化に加え、コロナ禍の影響も受け、本年度をもって解散することが了承された▼「もう30年も通っているよ。家の風呂に入っていないから」。取材に行った日、茨城県から来たという漁師の70代男性はビールを片手に、入浴後の仲間との歓談を楽しんでいた。話を聞いていると、こちらまで楽しくなった▼震災・原発事故によって、宿泊客が減少した上、東日本台風ではアクセスする国道289号が土砂崩れに。追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの感染拡大が起きた▼ただ行楽シーズンには、ツーリング客も詰めかけ、併設するオートキャンプ場には、最近では1人で楽しむ「ソロキャンプ」の利用も多いという。時代に即しつつ、地域住民の憩いの場所としての趣旨を忘れずに、次の運営に移ってほしい。