市暮らしの伝承郷には田人や遠野、好間などから移築した昔ながらのかやぶき屋根の古民家が5棟ある▼昭和生まれにとっては、どの季節・どの時間帯でも子供のころの懐かしい気分にさせられる。春、今では珍しくなった縁側で一休みするときのホッとした気分。閉園間近の人けのない薄暗い家の中、座敷わらしが現れるのではないかと思わせる秋もいい▼夏のいま、古民家では蚊帳が吊られている。蚊帳もまた幼いころの思い出だ。あのいい香りはなんだったか。前にも提案したが、夏休み、今の子どもたちにここで昭和の宿泊体験をさせたい▼米をとぎ、竈に薪をくべてご飯を炊く。向かいの畑の朝どり野菜でおかずを調理する。ほかの子は雑巾で縁側や土間を拭く。蚊帳の中で寝るときはパジャマやTシャツではない寝間着が一番だ。消防署、保健所、教育委員会、あとはどこの許可を得ないといけないのか。せっかくいい場所があるのにね。せめて肝試しの会場に!
片隅抄