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片隅抄

2024.11.14

初めて事故後の福島第一原発に足を踏み入れた日のことは、いまでも鮮明に覚えている。事故から1年あまり経っていたが、1~3号機の原子炉建屋が立ち並ぶ中で、マイクロバスの車内は毎時1000マイクロシーベルトを計測。東電担当者の「スピードを上げてもらいます」の声に合わせ、駆け足で通り過ぎた▼当時は防護服に全面マスクが当たり前だったが、現在は構内全域の96%のエリアで軽装が許されている。まさに隔世の感。しかし廃炉までの道のりは遠い。ようやく2号機から、溶け落ちた核燃料(デブリ)の採取に成功した▼1~3号機には計880tのデブリがあるとされ、試験的取り出しで得たのは0・7g。その性質は全体の特徴をとらえているか分からず、今後の詳細分析にゆだねられている▼果たしてデブリをすべて回収することは可能なのか。時間もコストも未知数だ。だが福島の復興は、廃炉の完遂にかかっていることを肝に銘じてほしい。

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