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片隅抄

2024.12.03

歌人と俳人を間違ってしまうほどの酷い音痴だ。学生時代は古典が最も苦手で、特有の言い回しや歌語を見ては「はて、これは何の幾何学模様か」と目を白黒させた▼それが記者を生業としているのだから面白い。初めはちんぷんかんぷんでも経験を重ねるごとに行間を読む力が身に付き、日本語の美しさが沁みるようになった。幼少から物語を頭で映像化しながら紡いでいく癖があり、情景が浮かばない作品と出合うと落胆する▼詩はなお更苦手意識を持っていたが、草野心平と宮沢賢治は別。彼らの詩を読むと、情景が映像としてぶわっと広がっていく▼谷川俊太郎氏は21年前、いわきで粟津則雄氏と対談した際、心平について「古代人的な感覚を持っていた」と評した。言語にできないものを何とか言語で表そうとした結果、擬音が生まれたとは粟津氏。心平の頭には、詩の情景が鮮明な映像として浮かんでいたに違いない。賢治のようにたれか映像化してくれまいか。

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