その昔、商売柄だろうがワインに詳しい酒屋さんから「日本は地震が多いので、管理には不向きなんです」と聞いた。そんなものかなと思ったが、特に高価なビンテージには当てはまるようだ▼時節柄どうしても東日本大震災に触れざるを得ないが、発生当時は泉町に支社があった。取材に向かう途中、大きな揺れに見舞われ、やっとの思いで帰社した。隣の酒屋さんに顔を出すと、床に散乱した日本酒などのガラス瓶の破片と中身の甘い香りが充満していた▼酒好きの落語家古今亭志ん生は関東大震災の際、近所の酒屋に飛び込み飲みまくった逸話が残っているが、こちらが嗅いだアルコールの匂いは15年経った今でも覚えている▼あの異様に長く続いた午後2時46分の地震。その30~40分後、沿岸部に襲来した大津波。橋上から見た水量であふれる鮫川。飲み物が全て品切れになった自動販売機など、当日のひとコマがよみがえるが、本当の恐怖は止むことのない余震だった。