高校野球で甲子園の土を持ち帰った最初の球児には複数の説がある▼そのうちの一人が1949(昭和24)年夏、福岡・小倉(この年は小倉北)の福嶋一雄だ。福嶋は47年夏に旧制小倉中4年で、全5試合を完投して全国制覇。さらに翌48年夏には新制小倉高2年として、全5試合完封で大会連覇を果たす▼しかし3連覇を狙った49年夏は準々決勝で敗退。すると帰郷後に大会審判副委員長・長浜俊三から速達が届いた。2007(平成19)年の朝日新聞の記事によると、「君のユニホームのポケットに大切なものが入っている」と書いてあった。無意識のうちに本塁の後ろで土をすくう福嶋の姿を、長浜は本部席から見ていたという▼市民に感動を与えた東日大昌平のナインも、有明との試合後に土を集めていた。テレビカメラが偶然、「いい3年間だった」「高校野球ありがとう」と記録員の中野蘭さんがつぶやく様子を拾った。そのすがすがしさに、胸がいっぱいになった。