風に揺れて首を上げ下げ
いつの頃からか、背の高い紅いユリの花が庭に咲くようになった。初めは細い茎がひょろひょろと出てきて梅雨明け頃に橙色の花を咲かせる。植えた記憶はないので鳥などのお土産だろうと思う。ここ数年でその数が急に増えてきたが、1本につく花の数はせいぜい3~4輪が限度で、ほとんどが1輪か2輪だ。長い茎の先に花をちょろちょろとつけている様子が甚だ頼りない。
優しいと言えば聞こえが良いが豪華という印象はない。似た花にコオニユリというのがあるが、それは葉の付け根に黒紫色のムカゴが付いていないそうだ。また、その鱗茎は食用になり、ユリ根として売られているという。家の花にはムカゴが付いているのでオニユリに違いない。オニユリの鱗茎も食用になるというが苦味があるらしい。別段食べてみようとは思わないが、このようなか細い見映えでは鱗茎も小さくて食べ応えがないだろう。それよりも重たげに首を垂れて咲くその様が何より風情がある。描こうとすると長い茎が画面からはみ出してしまって構成が難しいが風に揺れて首を上げ下げする様がまた可愛い。どのように描いたら良いのか考えあぐねているうちに、いつの間にか夢現の狭間に陥りただひたすらに幸せな気分に包まれた。