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いわき民報ふるさと出版文化賞 最優秀賞なし 優秀賞は平赤井の海野さん
16回目となる「令和4年度いわき民報ふるさと出版文化賞」(いわき民報社主催)は、審査の結果、最優秀賞の該当作はなく、優秀賞に平赤井字田町、社会福祉法人いわき福音協会名誉理事長・海野(うんの)洋さんの自分史『山河に戯れる 遠い記憶の日々』が選ばれた。
特別賞には、平下高久区発行の地誌『まほろばの里 高久の歩き方』が選ばれた。いずれの作品も、自分が生まれ育ったふるさとのよさを再認識し、それを後世に語り継ぐ気持ちを込めて1冊の本にまとめた。授賞式は16日、平字大町の割烹料亭正月荘で開かれる。
選考委員会には馬目順一委員長のほか、小野一雄、玉手匡子、小宅幸一、中山雅弘、酒主真希さんら学識経験者と、いわき民報社の鈴木淳代表取締役が出席した。
優秀賞の『山河に戯れる 遠い記憶の日々』は小説ふうの自分史。主人公〝涼〟少年に自分を重ね合わせ、海野さんが実際に体験した70~80年ほど昔の赤井地区での思い出を綴った。
空襲警報で防空壕へ逃げ込んだり、川遊び中に機銃掃射に遭ったこと。農家でも食うに困った終戦直後。かつて夏井川に架かっていた人一人がやっと渡れる一本橋や自然豊かな裏山にまつわるエピソード。今はない日曹赤井炭鉱、機械化になる前の米づくりの苦労と喜びなどが描かれる。
現在88歳の海野さんは、作中で「夏井川は詩情豊かで美しかった。子ども達の成長に深く寄り添ってくれた」と振り返る。「便利になったが、今は人間らしい生活が失われるばかり。戦中戦後の、貧しくとも心は豊かで、自然と共に生きてきたいい時代を、孫たちに伝える気持ちでこの本を書いた」と話している。