東京電力福島第一原発の汚染水を浄化した後の処理水を巡り、今夏にも予定される海洋放出に対して、市漁業協同組合(市漁協)主催の説明会が19日、中央台公民館で開かれた。
説明会には、市漁協と小名浜機船底曳網漁協の幹部ら約30人が出席し、報道陣にも公開された。市漁協の江川章組合長は改めて反対の姿勢を示した上で、「廃炉まで30~40年続く中で、これまでのように(海洋放出によって)想定外の事態が起きれば、われわれの第一次産業は消滅してしまう」と危機感をあらわにした。
海洋放出に関して、出席した漁業者からは不安の声が相次いだ。シラスや刺し網漁をする60代の男性漁師は「海洋放出が行われれば、取引を停止すると言ってきた仲買人がいる。国や東電は説明しているというが、ちゃんと伝わっているのか。問題が起きてから対応では、遅いのではないか」と疑義を呈した。
小名浜機船底曳網漁協の柳内孝之理事は、韓国が宮城県のホヤを禁輸としたため、漁業者が養殖の転換を迫られた事例を基に、「政府は助けてくれないと感じた。このまま海洋放出を実施すれば、福島県の漁業者も見捨てられる」と強く反発した。
江川組合長も質問に立ち、漁業の存続に向けた若手のあり方から、横断的な組織で原発を監視することを説き、国や東電も協力するよう訴えた。また政府が販路拡大や風評対策として、計800億円の基金を創出した点について触れ、「沿岸で漁を行っている漁業者にとっては、使いづらい内容となっている」と指摘した。
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